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聖ミコライの冬の旅

25/12/5 3:00

12月6日の夜、ウクライナの上にやわらかな銀色の薄霧が静かに降りてきます。
それは、古い伝説が目を覚ます時——聖ミコライが冬の旅に出る瞬間です。

その物語は4世紀までさかのぼります。小アジアのミラという町に、子どもたちを助け、困っている人々を支えた心優しい司教がいました。人々はその行いを大切に語り継ぎ、やがてミコライは多くの国の冬物語の主人公となっていきました。



ウクライナの村々では、かつて「彼は静かな小道を歩き、子どもたちの願いに耳を傾ける」と言われていました。


ハリチナでは枕の下に小さな靴を。
ポディッリャではリンゴやクルミを感謝の印としてテーブルに置きました。
ポリッシャでは子どもたちがそっと“ミコライの詩”をささやきました。



18〜19世紀のミコライの贈り物は、干しリンゴ、蜂蜜入りのジンジャーブレッド、クルミでした。


その頃、私たちが知る姿——白い長いひげをたくわえた、やさしいおじいさんのイメージが形づくられていきました。夜にそっと家に現れ、静けさと不思議な期待を運んでくる存在です。



そして、この長い物語にはもう一つの道があります。
風車の国オランダには「シンタクラース」というミコライの姿がありました。


その伝説を船乗りたちがアメリカに運び、雪の町々で新しい形へと花開きました。
こうして、白いひげとトナカイに導かれた陽気なサンタクロースが誕生したのです。
その心には、私たちのミコライと同じ——「優しさと子どもへの思いやり」が生き続けています。



20世紀にはウクライナの習慣が一部薄れましたが、1990年代にこの物語は再び戻ってきました。


学校の行事、慈善活動、枕の下の小さな贈り物。
ミコライは再び「やさしい心」と「支え合い」の象徴になりました。



いま、12月6日の朝には蜂蜜菓子の香りと、窓辺に灯る柔らかな光があります。
子どもたちは贈り物を見つけ、大人たちは自分が過ごした冬の朝を思い出し、この日に願った思いはそっと空へ昇っていきます。



ミコライの旅は今も続いています。
家族の中に、あたたかな言葉の中に、そして小さな善意の行いの中に。
そこに、冬を明るく照らす彼の物語が生きています。

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